現地法人の設立手続は、マレーシア会社登記所(CCM:CompaniesCommission of Malaysia、マレーシア語表記ではSSM:Suruhanjaya Syarikat Malaysia)のウェブサイトにアクセスし、MyCoID(MalaysiaCorporate Identity)と呼ばれる事業登録システムを使用し、オンライン上で行うことが義務付けられています。MyCoIDではスーパー・フォームと呼ばれる書式を用いて、社名の使用許可申請(ネームサーチ)、および社名使用許可後の設立登記書の提出を行います。 会社登記申請の前に確定しておくべき事項としては、以下の項目が挙げられます。 ・ 会社秘書役の選定 ・ 会社名 ・ 発行株式・資本金額 ・ 取締役(Director) ・ 発起人(Promoter) ・ 定款(Constitution)の有無本書P.●の情報入力シートにある情報で申請が可能です。 [設立手続] 【設置フロー】 ❶会社秘書役の選定 ❷ネームサーチと保全申請 ❸オンライン申請 ❹会社定款の作成( 任意) ❺社印の作成と登録( 任意) ❻登記通知受領 ❼登記完了後の手続 [会社秘書役の選定]… ❶ マレーシアの会社は、必ず1名以上、会社秘書役を起用する必要があります。国に登録された有資格者である必要があることから、一般的には会社秘書役業務提供会社に依頼します。会社秘書役は会社の登記、会社情報変更の届出などに加えて、年次報告書の届出など、各種手続を行います。以下の手続も、基本的に会社秘書役の指示に従って書類等準備を行います。 [ネームサーチと保全申請]… ❷ 会社設立に際し、まずはMyCoID上で希望する社名の候補を複数挙げて、社名の検索を行います。そこでマレーシアで使用しても問題ない社名かどうか、すでに使用している企業、社名が類似している会社がないかを調査します。手数料は50リンギットです。マレーシア国内にすでに同一の社名を使っている会社がある場合は使用できず、また州や政府機関を連想させるようなもの、王国や国王等を連想させるもの、ハイフンやドットが入った社名は使用が認められません。会社名は50字未満である必要があります。問題なければCCMからその旨が通知され、申請により3 0日間、申請した名前が保全されます。保全期間は一度につき5 0 リンギット支払うことで30日ずつ、最大180日まで延長することができます。 [オンライン申請]… ❸ 会社登記の申請はすべてMyCoID上で行いますが、下記の書類が必要です。 スーパー・フォーム 2016年会社法発効以前に存在していた各種フォームを統合、整理して編纂された申請用紙であり、以下の情報の記載が必要です。 ・ 会社名 ・ ビジネスの詳細(資本金額、事業目的など) ・ 公開・非公開会社の別 ・ 本店の住所 ・ 会社秘書役、取締役、発起人の情報(氏名、国籍、ID番号、現住所) ・ マレーシア居住者情報(氏名、ID番号、現住所) 本店の住所については、通常は法人設立時にオフィス賃貸契約などの締結が困難なことから、会社秘書役業務提供会社の住所を借りて登録を行います。 また、すべての会社には1名以上、マレーシア居住者である取締役がいる必要があります。実際にはほとんどのケースで設立時にマレーシア居住者がいないため、会社設立業者などに名義貸しを依頼して登記を行うことが一般的です。 宣誓書 宣誓書(Notice of Declaration)は発起人、および取締役の全員が会社運営に資することを保証する書類です。 原則として、登記を行う会社秘書役の前で直筆の署名を行うものとされていますが、マレーシアまで来ることが困難な場合は、代わりに署名証人(Witness)となるマレーシア居住者、または国の機関としての公証人による署名の認証が必要です。 日本の公証人を利用する場合、ハーグ条約(正式名は「外国公文書の認証を不要とする条約」)締約国であればアポスティーユ(Apostille)を利用できますが、マレーシアは非締約国であるため、公証人役場、日本国外務省、在日マレーシア大使館・領事館の認証過程を、すべて経る必要があります。 身分証明書 会社秘書役、取締役、発起人の全員に関して、身分証明書のコピーおよび住所証明書類の提出が必要です。 マレーシア国民であれば、国民登録証明カード(NRIC: NationalRegistration Identity Card)という身分証を、外国人であればパスポートの顔写真ページをスキャンした画像を提出します。 パスポートは顔写真ページに署名がされており、それ自体が国籍証明兼サイン証明書として認識されるため、日本の印鑑登録証明書と同様の、重要な意味を持ちます。 したがって、パスポートのサインとマレーシアの会社関係書類や、銀行など各種機関の公式サインを一本化しておくと、手続がスムーズになります。 住所証明書類には、通話料金や電気代といった各種支払明細書、免許証(表面)のコピー、クレジットカードの利用明細などが該当します。仮に取締役がマレーシア国外にいる場合であっても、上記資料は必要です。 申請料 株式有限責任会社の登記申請料は、1,0 0 0リンギットです。 MyCoID上で支払を行いますが、会社秘書役業務提供会社に前払、または立替払を依頼して行うこともできます。 設立申請後、CCMから査問を受けることがありますが、質問に回答すれば設立が却下されることはほとんどありません。 [会社定款の作成と登録]… ❹ 2 0 1 6年会社法の施行前は、基本定款(Memorandum ofAssociation)と附属定款(Articles of Association)の作成が義務付けられていましたが、現在、この2つを統合した定款の作成は任意とされています。 定款を作成する場合には、その旨を臨時株主総会の特別決議(Special Resolution)で採択する必要があり、会社秘書役が作成した書類に署名して、原本を提出します。 CCMは定款作成のためのモデル定款を用意しており、会社の基本情報を入力すれば、基本的な体裁を備えた定款が作成されるようになっています。 モデル定款のURL:http://www.ssm.com.my/Pages/Legal_Framework/PDF%20Tab%202/sample_clbg_constitution.pdf 定款の登録(Lodging Constitution)は会社秘書役の役目とされており、MyCoID上で30リンギットを支払って行います。 [社印の作成]…❺ 社印(Common Seal)は、以前は設立時に作成が求められていましたが、2016年会社法により任意になりました。 ただし、実際には地域のライセンス取得申請時や、他国の政府機関、国際取引の契約書などで、署名と合わせて社印が求められることが多いため、作成が推奨されます。 マレーシア都市部では印章作成業者が多く、インターネットなどでデザインを指定し、会社名と会社登録番号を伝えればおおむね数時間で作成されます。 [登記通知受領]… ❻ 会社登記が完了すると、CCMから登記通知(Notification ofRegistration)が発行されます。 [登記完了後の手続]… ❼ 登記通知受領後、以下の対応が必要となります。 第一会社秘書役の選任 登記完了から3 0日以内に、会社秘書役を正式に選任する通知書(Notification of Appointment)を発行し、選任の日から14日以内にCCMに登記を行います。 この場合の第一会社秘書役は必ず政府登録業者(ProfessionalUser)から選ぶ必要があり、通常、会社秘書役自身が自ら作成した書類に署名することになります。 銀行口座開設 資本金の送金に先駆け、地場の銀行に口座を開設する必要があります。商業銀行としては、CIMB銀行、Maybank、Public Bank、RHB銀行などマレーシアの銀行に加えて、バンコク銀行、Bank ofAmerica、中国銀行、Citibank、HSBC銀行などの外国銀行があり、会社用には小切手の振出が可能な法人口座(Corporate BankAccount)を開設します。どの銀行の口座を開設することもできますが、実際には会社を設立する地域に支店がある銀行で口座開設をすることが求められます。当該銀行の口座を保有している個人、または会社の紹介があって初めて審査が通るという側面があるため、設立希望地域や設立業者によって選択肢は限定されます。 資本金の払込 口座開設後、資本金を払込み、銀行が発行する着金証明をもって秘書役に依頼することで、資本金の登録手続を取ります。外国人資本1 0 0%の会社の場合、就労ビザ(EP:EmploymentPass)の取得に最低でも50万リンギットの資本金が必要である状況が続いているため、資本金の金額は確認が必要です。 事業用ライセンス取得 事業内容や就労ビザ取得の必要の有無に従って、各省庁からのライセンスを申請・取得します。主な例としては、ビジネスライセンス(Business Premises License)、販売業者ライセンス(WRT:Wholesales Retail TradeLicense)などがあります。自社の事業にどのライセンスが必要になるか、設立業者などに確認を行うことが肝要です。 各種登録 企業コンプライアンス遵守のため、税務、労務上の各種登録を行います。代表的なものは以下のとおりです。 ・ 売上・サービス税(SST:Sales and Services Tax):2018年9月より導入された消費税の一種 ・ 法人所得税(CIT:Corporate Income Tax) ・ 従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund) ・ 従業員社会保障制度(SOCSO:Social Security Organization /PERKESO:Pertubuhan Keselamatan Sosial) その他コンプライアンス 法人登記後は、以下のような義務があります。 ・ 本店所在地(Registered Office)の変更(実際にオフィス契約を締結した後) ・ 会計年度(Financial Year End)の決定(設立後18カ月以内に会計報告書(Audit Report)が提出できるよう設定) ・ 外部監査人の選任、監査の実施(設立後1 8カ月以内、その後は会計年度末後6カ月以内) ・ CCMへ年次報告書を提出(毎年設立日から30日以内)なお、2016年会社法により、定款にその定めがなければ、年次株主総会(Annual General Meeting)の開催は必要なくなりました。 上記の「年次報告書(Annual Return)」は会計報告書とは異なり、毎年、設立日から30日以内に提出することが義務付けられています。 内容として、以下の事項が記載されていなければなりません。 ・ 登記上の本店住所 ・ 事業内容 ・ 支店を含む実際に事業が行われている住所 ・ 株主名簿が保管されている住所(登記上の本店住所に保管されていない場合) ・ 財務諸表が保管されている住所(登記上の本店住所に保管されていない場合) ・ 株式、社債の保有形態 ・ 負債総額 ・ 取締役、会社秘書役、監査人の概要 ・ 株主の名簿 ・ その他必要とされる事項