間接税として、日本の消費税や他国の付加価値税と類似したミャンマーの税金、商業税(Commercial Tax:CT)ですが、その実務上の扱いに、しばしば困惑させられる方が多い税目でもあります。
今回は、そんな疑問の払拭のため、商業税の特殊な点を整理してお伝えします。
1)基本のコンプライアンス
商業税は、主に以下の法律で規定されます:
・1990年商業税法(Commercial Tax Law, 1990)
・2019年税務行政法(Tax Administration Law, 2019)
・連邦税法(Union Tax Law、毎年更新)
ミャンマー国内で事業を行うすべての企業が登録して徴収、納税、申告する義務を負い、概ね一般に「インボイス方式」と呼ばれる請求書金額ベースの定率徴税制度で運用されます(正確には、事業開始1か月前までに商業税登録が必要とされます)。
特別に取り扱われる一部品目(タバコ、酒類、宝石、自動車、燃料)、ホテル・観光業のサービス、通信・インターネット関係の物品およびサービスを除いて、一般の税率は5%とされています。
毎年のコンプライアンスは以下の通りです:
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項目
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英語名
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期間
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頻度
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商業税登録・更新
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CT Registration
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毎年2月中
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毎年1回
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商業税納付
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CT Payment
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翌月10日まで
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毎月
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商業税四半期申告
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CT Quarterly Return
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翌月末まで
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四半期に1回
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商業税確定申告
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CT Annual Return
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年度末から3か月以内
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毎年1回
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2024年現在、MPUカード等の支払いが可能であれば、商業税納付、四半期申告および確定申告はいずれもオンラインで完了させられる作業となっています。
2)商業税の特徴
商業税は、原則として請求書発行の日付、または支払いが行われた日付のいずれか早い方を基準として納付・申告の対象とすることになります。この点、前払が行われる際には、売上の認識よりも早く商業税を認識することになるため注意が必要です。
物品の販売にも全般に商業税は課されますが、企業が固定資産を譲渡するような場合には、売却する形になっても商業税を課す必要はないと判断されています。
同一の月内に日本の消費税と同じように、各企業は仕入・支出の際に支払った商業税(Input CT)を、売上の際に課税して徴収した商業税(Output CT)と相殺することができ、後者の金額が大きい場合にのみその差額を納税する義務を負います。
しかし、このInput CTの有効性を担保するためには、当該仕入・支出の際の請求書に加えて、専用フォームPaTaKha(KaThaKha)-05-01の発行を受ける必要があり、その原本の提出を以って初めてOutput CTと相殺することができます。
この専用フォームPaTaKha(KaThaKha)-05-01は、通し番号が印字されたビルマ語の専用紙面を税務局Tax Officeで申請して入手し、その紙面に直筆で情報を記載・署名捺印をしたもののみが有効として手続きされる仕組みになっています。
また、物品の輸入を行った場合にはその場で関税Custom Dutyの他に輸入商業税を支払う必要があり、その金額をInput CTとして認識するためには、専用フォームPaTaKha(KaThaKha)-05-02を作成して税務申告時に提出することになります。
なお、税務申告時には以上のInput CTについて、上記PaTaKha(KaThaKha)-05-01およびPaTaKha(KaThaKha)-05-02に加えて、税務当局へ説明書を宛てる形で作成される、PaTaKha(KaThaKha)-05-03というフォームも提出が求められます。
Output CTとInput CTの相殺は、原則として同一月内で行われるものとされており、実務上は同一四半期内での相殺が許される形で運用されます。四半期内での相殺が難しいタイミングで発生したOutput CT、Input CTについては、究極的には年次の確定申告で調整される形になりますが、年度をまたいでの相殺は認められません。
以上のルールにより、結果的に生じ得るのが、先に売上が認識され、月をまたいで原価・費用が認識されることによる過払いOverpaidと、Input CTのうち、相殺のタイミングが合わないことにより年度末まで残ってしまう仮払金額Advance Paidです。前者のOverpaidは翌期に持ち越すことが可能ですが、後者のAdvance Paidは原則として持越しは不可となり、会計上も資産から費用への振り替えが必要になります。
3)商業税申告の実務
ミャンマー税務当局IRDのポータルサイト上で自社アカウントにログインして申告書PaTaKha(KaThaKha)-03-01を記入、関連する添付書類を添え、担当者・代表者としての電子署名(署名画像、事前に登録したものである必要あり)を添えて提出します。
添付書類としては、担当する税務官によって、必ずしも必要ないと言われる書類もありますが、一般に以下のものをPDF書類として添付することになります:
・商業税登録証PaTaKha(KaThaKha)-01-02(当該年度のもの)
・納税証明書Tax Challan(各月のものすべて)
・Input CT証明用PaTaKha(KaThaKha)-05-01リスト
・Input CT証明用PaTaKha(KaThaKha)-05-02リスト
・Input CT説明用PaTaKha(KaThaKha)-05-03
・その他、免税等特殊な状況の場合、関連のレター等
PaTaKha(KaThaKha)-03-01の内容は、以下の4つのパートに分かれています:
・企業情報(分類、免税等の有無、連絡先等)
・PART A:物品の製造・販売に課せられる商業税
・PART B:国内における業務提供に課せられる商業税
・PART C:商業税の納税額・過払い金額計算
うち、PART Cについては以下ような構成になっています:
- 商業税課税額Commercial tax due:上述のPART AおよびPART Bの合計額としてのOutput CT金額が自動計算されます。
- (物品・サービス)仕入税額控除金額Total allowable commercial tax credit:当該期間に国内で物品・サービスの提供を受けた際支払ったInput CTの金額を手打ちで入力します
- (輸入)仕入税額控除金額Total allowable commercial tax credit:当該期間に物品の輸入を行った際に支払ったInput CTの金額を手打ちで入力します
- 商業税納付金額Total of commercial tax monthly payments:当該期間に納付された商業税金額の合計額を手打ちで入力します
- 商業税過払金額前期繰越Amount of commercial tax overpaid carried forward:前期までの過払い金額が自動的に計算されます
- 相殺可能金額Total allowable payments:上記2. から5. までの合計金額が支払い済み金額として自動的に計算されます
- 未払金額Balance due:上記1. から6. を引いた金額がプラスになれば、申告時点での未払金額として自動的に計算されます
- 過払い金額Amount overpaid:上記1. から6. を引いた金額がマイナスになれば当該金額が過払いとして自動計算され、翌期へ繰り越されます
ただし、上述のOverpaidとAdvance Paidの議論により、各年度の税額の関係は以下の例のようになる点、注意が必要です:
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Financial year
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FY2022-2023
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FY2023-2024
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FY2024-2025
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FY2025-2026
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Output CT
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1,000,000
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1,000,000
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1,000,000
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1,000,000
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Input CT
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600,000
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1,200,000
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700,000
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1,100,000
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Overpaid b/f
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0
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100,000
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200,000
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0
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CT Payable
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400,000
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(300,000)
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100,000
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(100,000)
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Payments made
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500,000
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100,000
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100,000
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0
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Overpaid c/f
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100,000
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200,000
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0
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0
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上記表中の「商業税要納付金額CT Payable」は、「仮受商業税額Output CT」から「仮払商業税額Input CT」を引き、更に「過払い金額前期繰越Overpaid b/f」があればそれも差し引いて計算します。
「商業税納付額Payments made」は各月に納付された金額の合計であり、売上が先行して原価・費用が翌月に回るような場合は、「商業税要納付金額CT Payable」を上回る金額を納付してしまうことも往々にしてあり、同金額が「過払い金額次期繰越Overpaid c/f」となります。
※上記の例ではFY2023-2024において、CT Payableはマイナスであり、更に100,000納付されているため、本来なら差し引き400,000過払いとなっている計算ですが、実際に税務当局に納付された金額のみがOverpaidと認められるため、200,000が損失となります。
※※上記の例ではFY2025-2026において、CT Payableはマイナスですが、実際に税務当局に納付された金額ではないためOverpaidとは認められず、同額100,000が損失となります。
4)事業別の特色
飲食店やホテルなど、一般消費者を対象とした事業の場合、商業税の徴収には領収書に添えて商業税金額分の専用ステッカーを貼り付けることが求められます。
一方、商業税の徴収は全国的にまだ徹底されておらず、「会社で証憑として使う」と伝えた場合のみ税額が課せられ、レシートにステッカーが貼られるという店舗もしばしばあります。
また、インフラ工事など、政府機関との契約で事業を行う場合、当該事業の期間中であれば、年度をまたいでInput CTとOutput CTが相殺できるとする特例を税務当局が認める例もあります。
単一の企業が複数のプロジェクトを行うような場合、税務当局としてもそれぞれのプロジェクトの売上と原価を対応させるべきだという判断をするため、商業税申告の際にプロジェクト単位でInput CTとOutput CTを記載した書類の提出が求められることがあります。
国家間援助Grant Aidによる事業展開を行う企業や、経済特区SEZなどで免税事業者として活動している企業については、商業税も一律免除となり、請求する側もそうした特別な事業者への業務提供として商業税なしの請求書発行・商業税申告を行う等、特別な扱いをすることになります。